〔連載特集〕筆の里工房周辺の整備事業 「つながる つなげる」 (その3)
都市公園と公園施設(観光交流拠点)の建設を進めています
(イメージ図)
わずか76年後には、日本の人口が今の半数に減少すると見込まれるなか、“ふるさと熊野”を子や孫に残すために、私たちには今できることがあります。
個性豊かな文化を活かした魅力的なまちづくりも、移住する場所、住み続ける場所として人々をまちに惹き付ける大切な取り組みの一つのはずです。
熊野町は筆産業とそれにより培われた文化芸術が息づくまちです。このソフトパワーを活かし、この地に住む人々がつながり、まちと文化を未来につなげるため、都市公園と観光交流拠点施設の建設を進めています。
今回の内容
観光交流拠点施設(建物)の設計者の選定方式、経緯及び結果等を紹介します。
設計者の選定方式と施設活動により目指す姿
建築設計者の選定は、「公募型プロポーザル」と呼ばれる方式で行いました。〔連載特集(その1)に関連記事〕
町は設計提案の募集に際し6つの事柄を掲げ、この施設の活動を通じて実現を目指す姿を示しました。
・発想力や創造力を発揮した創作活動が協働して展開され、演出される。
・新しい自分を見つける自律的な探求の取組がなされる。
・多彩なアート活動を通じて「くまのらしさ」がデザインされ、発信される。
・自然・くらし・文化・産業が調和した「くまのの魅力」が再確認され、磨かれる。
・「そこに居るだけ」の心地よさと価値観が実感でき、たおやかさや寛容さが醸成される。
・ミュージアムを含めた全体空間のなかで、国や地域、世代を超えた交流の輪が広がる。
選定審査の概要と審査結果
選定審査を公平・公正に行うため、あらかじめ、選定の基準や方法、外部の有識者6名で構成する選定委員会の設置などを公表しました。
一次審査(評価テーマに沿った書面審査)で応募36作品から6作品にしぼり込み、令和4年9月に公開の場で実施したヒアリング(建物模型を用いた各提案者からの説明や質疑応答)を踏まえ、二次審査を行いました。
その結果、次の者を建築設計者に選定し、基本設計及び実施設計を行いました。
環境デザイン機構・角建築研究室 設計共同体
(福岡県福岡市)
(公開ヒアリング風景)
(公募型プロポーザルの二次審査に進んだ「技術提案書」は、関連情報からご覧いただけます。)
建築設計者選定委員会 会長 のコメント
広島大学大学院 先進理工系科学研究科
教授 田中 貴宏 氏
委員会で最終的に選定した提案は、熊野の代表的景観である「里山」を大事にしつつ、その中に「創作や交流の場」を配置するというもので、熊野の自然とこの場に来られる方々への優しさが感じられる、優れた建築です。
このような建築が熊野に誕生することは、とても楽しみです。
ところで、「生きた建築」という言葉があります。建築は、地域の皆さんに使われ、愛されて、はじめて「生きた建築」となります。この建築が完成したら、町民の皆さんの出番です。この建築を使いこなし、皆さんの手で「生きた建築」としていただくことを期待しています。
建築設計者のコメント
プロポーザルでの提案は、施設運営の基本的な考え方を可視化したものです。それをベースに町当局や筆の里工房の担当者のほか町民の皆さんとも対話を重ねつつ、利用される方々の楽しまれている姿、屋内外の空間が創造的に使われている様を思い描きながら実施設計にあたりました。
資材価格の上昇で設計者の知恵と工夫が試されるなか、このプロジェクトに関わることができ光栄に思います。
連載記事をお届けします!
公園施設(観光交流拠点)がオープンするまでの間、これまでの経緯や整備事業の進み具合、予定する事業内容への町民のみなさんからのコメントなど、様々な角度からの連載記事をお届けします。
次回(その4)は、建築設計について熊高生や町民の皆さんからいただいた意見、それらの反映や施設の特徴などを紹介します。