フデリンドウ

春に咲く小さなリンドウの中で熊野町で見られるのが、筆竜胆です。蕾や閉じた花の形が筆の穂先に似ているので名が付きましたが、リンドウの仲間はどれも同じような形をしています。
花は4~5月。町内では4月後半頃よく花を見ます。花の長さは2~2.5cm。茎の上部に数個の花をつけますが、時には20個以上つけた株も見ます。花の色は普通青紫色で、変異があります。
日が当たらないと花は開きません。曇りや雨の日、夜は傘を畳むように花を閉じます。これは、リンドウの仲間の多くに共通する性質です。虫が訪れず花粉を受粉できない時や、雨が花の中に入り傷むような時には花を閉じるのでしょう。
茎の高さは5~10cm。葉は柄がなく対生します。根元に大きな根生葉がないのが特徴です。
果実は、花から少し突き出し先が2片に裂けています。種は微細。秋に発芽し冬を越して春に咲き実を結んで命を終える越年草です。
移植は困難で、種をまいても発芽もしないそうです。様々な条件が整って命をつなぐことができるのです。
東アジアの温帯に広く見られ、ほぼ日本全土に分布します。山の草原や林縁などに生え、町内では10数ヶ所見ていますが多くはありません。写真は串掛林道で昨年4月25日に撮りました。
【写真・文】
緑花文化士 冨沢由美子