○熊野町防災・減災まちづくり条例

令和2年3月16日

条例第4号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第3条)

第2章 自助(第4条・第5条)

第3章 共助(第6条・第7条)

第4章 公助(第8条―第19条)

第5章 協働(第20条―第24条)

第6章 要配慮者への支援(第25条)

第7章 伝承(第26条)

附則

平成30年7月豪雨により発生した土石流及び浸水害等は、一瞬にして尊い町民の命を奪い、財産にも甚大な被害をもたらすなど、熊野町にとって過去に経験したことのない災害となりました。

私たちは、この未曽有の災害の経験から得られた教訓を地域や世代をこえて後世に伝えていくとともに、大切な命を守るために、自らの命は自ら守る「自助」、地域で共に支え合う「共助」、町が町民等を守る「公助」の理念のもと、協働により防災・減災に取り組むことの重要性を改めて強く認識しました。

近年は、気候変動による大雨の多発や台風の大型化などにより毎年、全国各地で大規模な災害が発生しています。このような状況のもと、町民、事業者、関係機関及び町が防災・減災に対するより高い意識を持ち、それぞれの役割を十分理解し、町全体が協働して災害に強いまちづくりを実現するため、この条例を制定します。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、町民、事業者、自主防災組織、避難支援等関係者及び町の防災・減災の取組みにおける責務、役割及び連携の在り方を明確にし、防災・減災に係る基本的事項を定めることにより、それぞれが、自らの役割を認識した上で、主体的に取り組む気運を醸成するとともに、協働して災害に強いまちづくりを実現することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 災害 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、地震、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他大規模な事故により生ずる被害をいう。

(2) 防災・減災 災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び被害を最小限にとどめることをいう。

(3) 町民 町内に居住する者をいう。

(4) 帰宅困難者 災害により、帰宅することが困難となった者及び移動の途中で目的地に到達することが困難となった者をいう。

(5) 事業者 町内で事業を営む個人又は法人をいう。

(6) 自主防災組織 熊野町自主防災組織育成指導要綱(平成22年熊野町告示第138号)に基づく結成の届出を行った組織をいう。

(7) 要配慮者 高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者をいう。

(8) 避難支援等関係者 自治会、民生委員児童委員協議会、社会福祉協議会、その他避難支援等の実施に携わる者をいう。

(9) 防災関係機関 警察、消防、自衛隊その他防災に関係する機関をいう。

(10) 学校等 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校及び子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)に規定する教育・保育施設等をいう。

(基本理念)

第3条 防災・減災のまちづくりは、次に掲げる理念に基づき、町民、事業者、自主防災組織、避難支援等関係者及び町がそれぞれの責務と役割を果たし、協働することを基本理念とする。

(1) 町民及び事業者が、日頃から防災意識を高め、早期の避難を実践し、自らの身は自ら守るという「自助」の理念

(2) 町民、事業者及び自主防災組織が、地域のコミュニティを大切にし、声を掛け合える地域づくりを行い、自分たちの地域は自分たちで守り、地域のみんなで共に支え合うという「共助」の理念

(3) 町が、町民の生命及び財産を守るために、災害対策を推進するとともに、「自助」及び「共助」を支援する「公助」の理念

(4) 町民、事業者、町内の関係機関及び町が、防災・減災における役割を果たし、互いに連携、協力して災害に強いまちづくりを推進する「協働」の理念

第2章 自助

(町民の役割)

第4条 町民は、次に掲げる事項を実施することにより、災害が発生した場合において、自己及び家族等の安全の確保に努めるものとする。

(1) 地域の防災訓練に積極的に参加するなど、平常時から防災・減災に関する知識及び技術を習得すること。

(2) 災害時に必要な飲料水、食料その他生活物資を備蓄すること。

(3) 地震に備え、建物等の耐震化、家具の転倒防止等の措置を講ずること。

(4) 災害等に関わる情報の取得及び伝達手段並びに家族等との連絡方法の確認を行うこと。

(5) ハザードマップ等で、身辺の危険箇所、避難所、避難経路及び避難方法の確認を行うこと。

(6) 災害が発生し、又は災害が発生する恐れがある場合において災害に関する情報に留意し、自ら避難が必要と判断したときは、速やかに、かつ、互いに助け合い、避難すること。

(7) 避難所を利用する場合は、互いに協力して共同生活を営むとともに、避難情報の発令が解除されるまでの間、避難を継続すること。

(事業者の役割)

第5条 事業者は、次に掲げる事項を実施することにより、災害が発生した場合において、従業員、サービス利用者及び来訪者(以下「従業員等」という。)の安全の確保に努めるものとする。

(1) 従業員等の避難に必要な研修、訓練等を実施するとともに、安全確保の措置を講ずること。

(2) 災害等に関わる情報の取得及び伝達手段並びに従業員等との連絡方法の確認を行うこと。

(3) 事業所周辺の危険箇所、避難所、避難経路及び避難方法の確認を行い、従業員等への周知を行うこと。

(4) 災害が発生する恐れがある場合において、災害に関する情報を収集し、従業員等へ早期に帰宅を促し、また、災害発生後の交通状況等を勘案し、必要に応じて、従業員等への帰宅一時見合わせの呼びかけを行い、帰宅困難者の発生を抑制すること。

(5) 災害等により従業員等の帰宅が困難になった場合の滞在場所の確保及び滞在のために必要となる生活物資を備蓄すること。

(6) 事業所の周辺において、帰宅困難者が発生しているときは、一時的な避難場所の提供などの支援を行うこと。

第3章 共助

(町民及び事業者の役割)

第6条 町民及び事業者は、災害発生時に地域、とりわけ近隣の住民が助け合えるよう、普段から顔の見える関係づくりを心掛けるなど、相互の協力関係の構築に努めるものとする。

2 町民及び事業者は、互いの生命と財産を災害から守るため、自主防災組織の結成に協力するとともに、地域のコミュニティづくり活動に、積極的に参加するなど、地域コミュニティの醸成に努めるものとする。

3 町民及び事業者は、災害発生時に近隣の住民同士の円滑な避難及び負傷者の救護に努めるものとする。

4 町民及び事業者は、災害発生時に自己及び家族等又は従業員等の安全を確保した上で、救助及び被害情報の通報などを適切に行い、町が行う災害応急対策に協力するよう努めるものとする。

(自主防災組織の役割)

第7条 自主防災組織は、地域における防災意識の啓発及び高揚を図るため、防災に関する訓練及び研修の実施に努めるものとする。

2 自主防災組織は、町が提供する災害及び防災・減災に関する情報を活用し、あらかじめ災害発生現象の態様に応じた適切な避難時期、避難場所、避難路、避難方法などを把握するよう努めるものとする。

3 自主防災組織は、前項の規定により把握した情報及びその他の防災・減災に関する情報の周知に努めるものとする。

4 自主防災組織は、避難情報が発令された場合に避難が円滑に行われるよう、構成員の役割分担を設定するよう努めるものとする。

5 自主防災組織は、災害発生時の応急的な措置に必要な物資及び資機材等の備蓄、整備又は点検の実施に努めるものとする。

6 自主防災組織は、避難支援等関係者と連携し、地域住民の避難に関する情報を収集するとともに、町が行う町民の安否等の確認に必要な情報の提供に努めるものとする。

7 自主防災組織は、避難誘導等、地域における災害応急に関する活動を実施するよう努めるものとする。

第4章 公助

(町の責務)

第8条 町は、町民の生命と財産を災害から守り、その安全を確保するため、防災・減災及び災害応急のために必要な対策を推進するとともに、地域防災体制の整備を効率的かつ効果的に実施するものとする。

2 町は、町職員に対し、災害の経験を継承するとともに、防災・減災に関する知識の習得及び技術の向上のための研修の機会を確保するものとする。

3 町は、国、県その他地方公共団体及び防災関係機関と連携、協力し、防災・減災対策を推進するものとする。

4 町は、災害発生時における協力の要請を迅速かつ円滑に行うため、他の地方公共団体、その他公共機関、公共的団体及び事業者等に対し、あらかじめ防災・減災に係る協定の締結を推進するものとする。

5 町は、避難に関する必要な事項を明示するとともに、災害に関する正確な情報を収集し、町民、事業者その他関係者に迅速かつ的確に伝達するものとする。

(帰宅困難者への支援)

第9条 町は、帰宅困難者に対し、必要な情報の提供を行うものとする。

(防災訓練等の実施)

第10条 町は、国、県及び防災関係機関並びに町民、事業者及び自主防災組織等と連携を図り、地域の特性に応じた実践的な防災訓練及び研修を計画的に実施するものとする。

2 町は、町民、事業者及び自主防災組織が、災害に備え、前項の防災訓練に積極的に参加するよう啓発を行うものとする。

(防災・減災の啓発)

第11条 町は、町民及び事業者に対し、防災・減災への理解と関心を深め、自助及び共助の意識の高揚を図るため、防災・減災に関する知識の普及を行うものとする。

(消防団の充実等)

第12条 町は、地域の防災・減災対策において重要な役割を担う消防団員の確保及び装備品等の充実に努めるなど、消防団の組織及び機能の強化に取り組むものとする。

(物資等の備蓄等)

第13条 町は、災害の発生に備え、応急対策に必要な物資及び資機材を備蓄するとともに、関係事業者との間で協定を締結するなど、物資等の調達体制の整備に取り組むものとする。

(公共施設の整備等)

第14条 町は、総合計画に基づき、防災上の観点から、道路、河川、公園等の強靱化を図るものとする。

2 町は、防災拠点施設を整備し、地域防災力の強化に取り組むものとする。

(学校等の役割)

第15条 町は、学校等において、未就学児、児童及び生徒の成長に応じた防災・減災に関する知識及び技術並びに災害発生時において適切に行動する力及び命を守る力を身に付けることができるよう、防災・減災に関する教育を推進するものとする。

2 学校等の施設管理者は、災害が発生し、又は災害が発生する恐れがある場合において、未就学児、児童及び生徒の安全を確保するための万全の措置を講ずるものとする。

(財政上の措置)

第16条 町は、防災・減災対策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

(取組状況の公表)

第17条 町は、本条例に基づく取組みの実施状況について、毎年、議会へ報告するとともに、それを公表するものとする。

(職員の責務)

第18条 町職員は、防災・減災に関する知識の習得及び技術の向上に努めるとともに、日頃から地域活動に積極的に参加するよう努めるものとする。

(議会の役割)

第19条 議会は、町の執行機関と連携し、防災・減災に関する議会としての役割を果たすものとする。

第5章 協働

(自主防災組織の育成及び支援)

第20条 町及び自主防災組織は、人材の育成、防災訓練及び研修の実施に努めるものとする。

2 町は、自主防災組織の活動が円滑に行われるよう、必要な支援を行うものとする。

(自治会との協働)

第21条 町及び自治会は、災害が発生し、又は災害が発生する恐れがある場合において、密接な連携を図り、地域の防災力をもって住民の安全確保に努めるものとする。

2 町は、災害の発生した地域の自治会との的確な情報の共有を図るものとする。

(ボランティア団体等との連携)

第22条 町及び社会福祉協議会は、災害発生時に災害ボランティアの活動が円滑に実施されるよう体制の整備に取り組むとともに、平常時からその活動を目的とする団体との連携に取り組むものとする。

2 町及び社会福祉協議会は、町民等に対し、ボランティア活動への参加に関する啓発及び必要な知識の普及に取り組むものとする。

(応急体制の確立)

第23条 町は、災害が発生し、又は災害が発生する恐れがある場合において、国、県その他地方公共団体及び防災関係機関と連携するとともに、町民、事業者、自主防災組織及び町内の関係機関との協働により、直ちに応急対策を行うための体制を確立し、避難所の開設、災害情報等の収集及び伝達体制の整備並びに応急医療体制の整備等、必要な措置を講ずるものとする。

(避難所の運営等)

第24条 町及び町民は、避難所における生活環境が良好に保たれるよう、自治会、自主防災組織等地域の関係者と連携し、適切に避難所を運営するとともに、要配慮者への配慮を踏まえた運営となるよう努めるものとする。

第6章 要配慮者への支援

(要配慮者への支援)

第25条 町民は、近隣に居住する要配慮者の状況の把握に努めるものとする。

2 町は、防災・減災対策を実施するときは、要配慮者の安全が確保されるよう配慮するものとする。

3 町は、要配慮者のうち、災害が発生し、又は災害が発生する恐れがある場合に自ら避難することが困難な者であって、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要する者(以下「避難行動要支援者」という。)の把握に取り組むものとする。

4 町、町民、事業者、自主防災組織及び避難支援等関係者は協働し、避難行動要支援者の状況をあらかじめ把握するよう努めるとともに、避難行動要支援者の安全が確保されるよう、避難支援体制の整備に取り組むものとする。

5 要配慮者は、町及び避難支援等関係者に対し、あらかじめ避難等の支援に必要な自らの情報を提供するよう努めるものとする。

第7章 伝承

(災害の伝承)

第26条 町は、災害に関する記録を保存するとともに、災害に関する施策に活用するものとする。

2 町民、事業者及び町は、熊野町防災の日を定める条例(平成30年熊野町条例第32号)に規定する防災の日及び防災週間をはじめとしたあらゆる機会において、被災の事実及び災害の経験から得られた教訓を伝承し、防災・減災に対する意識の醸成を図るとともに、今後起こり得る災害に備えるものとする。

この条例は、令和2年4月1日から施行する。

熊野町防災・減災まちづくり条例

令和2年3月16日 条例第4号

(令和2年4月1日施行)