ヒガンマムシグサ
花茎を伸ばし、春の彼岸の頃から咲き始めます。奇妙な花に見えるのは、葉が変形したもので「仏炎苞」と呼ばれます。
本当の花は、この中です。花びらのない小さな花が、花軸の周りをびっしりと取り巻いています。
サトイモ科の中で、この天南星属の仲間は、一つの株が雄株になったり雌株になったりと「性転換」をします。それは、地下のサトイモに似た球茎の大きさで決まります。雌株では、短いトウモロコシ状に実が密集してつきます。実の集団を支える大きな株が必要だからです。秋には実が真っ赤に熟し、よく目立ちます。
葉は、鳥足状と呼ばれる形に7~13枚の小葉が並びます。小葉は真ん中が一番大きく、外側ほど小さくなります。この鳥足状の葉が2枚、花より下につきます。
マムシグサと比べて花期が早く、咲き始めには葉が出ていないという特徴があります。その後は、マムシグサとの区別が難しくなります。見分けるポイントは、葉が花や実より下にあり、2枚の葉は高さがほぼ同じで小葉の数があまり違わないという点などです。
茎のような部分の模様がマムシに似ています。
関東以西の林内に生える多年草で、有毒です。熊野町では稀に見られます。
【写真・文】
緑花文化士 冨沢由美子