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筆づくり  熊野筆ができるまでの順番(工程)を教えてください

 筆作りの最も大切な工程は、材料の毛の選び、筆の性質に応じて混ぜ合わせる過程です。熊野の筆を作る職人たちは、長年鍛え抜いた目と指先の感触を頼りに、一本の筆を丹念に仕上げます。 

 工程には「下仕事」→「台仕事」→「仕上げ」の3工程があります。

下仕事  

(1)選毛【せんもう】・毛組み【けぐみ】  

 筆作りは、毛の選別作業から始まります。材料を選び、筆先の使う場所に応じて長さや質を揃えます。羊毛を一房ずつ手に取り、選別します。確実に素材を見分けられるようになるには、数十年の経験が必要だといわれる、大変緻密な作業です。

 大筆、中筆、小筆、穂先の長短など、造る筆の種類にあわせて材料を組み合わせます。  

(2)火熄斗【ひのし】・毛揉み【けもみ】  

 選別された毛は、「毛揉み」と呼ばれる工程に入ります。毛揉みは、動物の毛に含まれる脂肪分や汚れを取り除き、毛の質を整えます。墨の含みを良くするための重要な工程です。

 毛は、一定の長さに切り揃え、籾殻(もみがら)の灰をまぶします。これに、熱した「火熄斗」(ひのし)を当てます。火熄斗をあてる時間や温度は、毛の種類によって微妙に調整されます。

 火熄斗された毛を素早く鹿皮に巻き、 毛を折らないように注意しながら丹念に揉み込みます。熱を含ませ、揉み解すことで脂肪分や汚れを取り除きます。

(3)毛そろえ  

 串抜きして綿毛(わたげ)を取り除いたあと、少量ずつ毛を積み重ね毛をそろえていきます。 何度も金櫛をかけて、毛の質を整えていきます。  

(4)逆毛、すれ毛取り  

 毛先を完全にそろえ、半差し(小刀)で逆毛、すれ毛等を指先の感触を働かせながら抜き取ります。良い毛だけを徹底的に選り抜きます。  

(5)寸切り【すんぎり】  

 筆の穂先は、5つの部分に分かれています。毛先の「命毛」、その下の「のど」 中程の「肩」、根元に近い「腹」そして、一番根元の「腰」です。

 寸切りは、この5つの場所に応じて毛の寸法を整える作業です。それぞれの部位の寸法を取った寸木を乗せ、毛先を基準にして切りそろえます。切目が正確に揃うよう、何度も確認しながら徐々に整えていきます。

 このようにして部分毎に整えられた材料の毛は、塊(くれ)と呼ばれるかたまりにします。  

台仕事  

 台仕事では、整えられた塊を実際に穂首と呼ばれる筆の先に組み上げます。  


(6)練り混ぜ【ねりまぜ】

 練り混ぜは、水に浸し、毛組みにむらができないよう整える作業です。塊を分解し、毛をうすく伸ばし、幾度も折り返して混ぜ合わせます。 逆毛などを取り除き、切り揃えて櫛を通します。質を吟味された毛は、布海苔(ふのり)で固め、平目にまとめます。  

(7)芯立て【しんたて】  

 芯立ては、練り混ぜした平目を1本分の大きさに分け、筆の形を作って行く工程です。平目から割った芯を駒と呼ばれる芯立て筒に通し、筆の形を作っていきます。手の感触を頼りに、不必要な毛を抜き取ります。  

(8)衣毛巻き【ころもげまき】  

 穂首の芯の周りに巻きつけられる毛を衣毛という。衣毛には芯に使われるものより上質なものが使われます。練り混ぜ、平目という芯になる毛と同じ工程を経て整えられた衣毛を、芯毛に巻き付けていきます。

 万遍なく巻く衣毛を巻くには、特に高度な技術が必要です。奇麗に衣毛が巻かれた穂首は、自然乾燥させます。乾燥した穂首の根元を麻糸でくくります。  

(9)糸締め【いとじめ】  

 糸の結び目を焼きこてをあて、固めると穂首の完成です。  

仕上げ  

(10)くり込み【くりこみ】  

 筆管(ひっかん)に穂首をすえつける工程が、くり込みです。筆管は、桜や竹から作られています。くり込み台の上で筆管の軸を回転させ、穂首は入りやすいように内側を均等に削ります。 

(11)仕上げ  

 穂首の寿命を保つために、糊固めをします。叩き付けるようにして糊を穂先に充分含ませます。不必要な糊は、糸かけで取り除きます。麻糸を穂首に巻きつけて、軸を回しながら糊をしぼり取ります。  

(12)銘彫刻【めいちょうこく】  

 充分に自然乾燥された筆には、工房ごとに銘が刻まれ、完成を迎えます。

 筆の里工房ホームページ「筆づくりの工程」では、動画の紹介もしていますのでご覧ください。

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熊野町総務部 産業観光課

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