フユイチゴ
冬の山歩きをより楽しくしてくれるのが、この「冬苺」です。晩秋から冬にかけて熟し、「寒苺」とも呼ばれます。程よい甘さで爽やかな山の味です。よく熟れている実は、摘むとぽろっと取れます。真っ赤に熟したつぶが10個ほど集まっています。一粒が一つの実で、中に種が入っています。
南方系の木苺の仲間で、本州の関東以西、四国、九州に分布しています。常緑の小低木で、つるを伸ばして這い回り地面を覆っています。杉林や竹林、林緑などによく生えています。
葉は互生し、長さ幅とも5~10センチメートル。ぎざぎざの先はとげ状で、葉の裏や葉柄は多毛です。花は夏から秋にかけて、枝先や葉のわきに集まって咲きます。白色で直径1センチメートルほど。花びらは5枚で多数の雌しべ雄しべがあります。がくの外側に短毛が密生しています。
ミヤマフユイチゴは、フユイチゴとよく似ていますが、葉の先がとがり、全体に毛が少なく、がくの外側はほぼ無毛です。つるにはトゲがあります。フユイチゴとの間に雑種ができるため中間的な型が見られます。
昔、苺というと木苺の仲間を指していました。天狗平と石嶽との間に、地元で苺谷と呼ぶ谷があります。フユイチゴやナガバモミジイチゴなど、木苺の多い谷だったのでしょう。
【写真・文】
緑花文化士 冨沢由美子